研究概要 |
若手教師の育成,特に初任者の成長の支援は教師教育の研究領域の大きな課題である。本研究では,初任教師の成長を支援するシステムの構築を目指し,そのための基礎データを収集することを目的とした。 具体的には,ある小学校の初任教師1名を対象として,彼の抱える問題とその克服方法を数ヵ月に渡って追跡し,初任教師の成長過程のモデル化を試みた。 データの収集は電子メールによる実践日記の収集(ほぼ週1回で34回),面接(ほぼ月1回で11回),授業観察(学期に1〜2回で,5回)によった。面接や授業記録はすべてプロトコルにして,分析に備えた。 収集したデータを1)問題の属性,2)問題の出現頻度とその変容,3)問題の克服,の観点で分析し,初任教師の成長過程の特徴を抽出した。 データを整理した結果,次のような結果が得られた。 1.初任教師の抱える問題属性 初任教師の抱える問題は,(1)教師間の協力,(2)授業づくり(学習ルーチンの形成を含む),(3)子ども把握,(4)父兄への対応,(5)学級経営,(6)時間,(7)初任者研修,(8)その他,の8つに整理できる。 2.初任教師の成長の特徴 初任教師は,(1)継続的な課題と時期特殊な課題の2種類の課題を抱えている,(2)成功と失敗が混在する状態にある場合が多い,(3)個別問題の克服から葛藤問題への挑戦へとより難しい問題解決に遭遇する,(4)子ども理解に乏しく,部分的には教員養成段階と同じ課題も有している,(5)教師コミュニティへの参加が成功すればかなりの問題を解決できる。 3.今後の研究課題 同時に,(1)中等教育教師の成長過程や社会や家庭で経験を積んで教職に就いた初任教師の成長過程をも研究対象として視野に入れる必要がある,(2)初任教師の変容を子どもたちの学習・生活の変化と照合すべきである,という研究課題の存在がクローズアップされた。
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