この奨励研究では、「教育におけるネットワーク環境設定の基準作成の基礎的研究」をテーマに以下のことをおこなった。 申請者のこれまでの研究である、コンピュータの通信機能を利用し小学生と若手科学者を結びつけ、学校の学習環境を科学者の文化的実践へと結びつけたことから得られた知見をふまえた上で、実際にネットワーク環境を教室に持ち込み社会へ開くときの指針となる、ネットワーク環境設定の基準を作成した。そのために、(1)申請者が94年度、95年度に行った小学生と若手科学者のネットワーク上でのやりとりのメッセージの記録のデータベースを構築し、質的、量的の両面からエスノグラフィカルな手法を用い、認知科学の研究背景をもとに、一定の観点から分析し、考察した。(2)(1)の考察をもとに、ネットワークの参加者に「学び」が起こるクリティカルな要因を特定した。それは、以下のことである。 ネットワーク上での「真の」対話が起こるには、 ・学校訪問などで、実際に出会い、相互に相手を認識する ・実験や観察をともにする ・ネットワーク上で子どもとともに問題に同様の立場で悩み取り込む ・子どもの時間に合わせ、子どもからの語りかけを待つ ・ネットワーク上の会議室構成を分野別ではなく、各子ども毎に設ける しかしながら、以上の研究成果はあくまでも一実践事例にすぎず、これが他の条件(例えば異なる地域や学年)の際にどこまで一般化できるかは明らかではない。
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