並列計算機システムの規模が大きくなるほど、ネットワークのデータ転送能力がプロセッサの処理能力に比べて見劣りするものとなり、並列実行にとって深刻な問題となってきている。このボトルネックを軽減するために、ネットワーク中の通信量を減らす研究がなされてきた。コンバイニング機構はその一つの方式であり、ネットワーク中の中間ノード上でハードウェアによって通信データをコンバイニング(単純な演算操作で複数のデータパケットを一つに融合)することでネットワーク通信量を積極的に削減しようとするものである。従来のコンバイニング機構は偶然ある中継ノードで同一目的、同一宛先のデータパケットが衝突した場合にのみ、コンバイニングを行っていた。しかし、マルチキャスト時のアクノリッジメッセージのようにコンバイニングが非常に有効であるにも関わらず、従来のコンバイニング機構ではうまくコンバイニングできないデータパケットが存在した。そこで、我々はコンバイニングの概念を一般化した「一般化されたコンバイニング機構」を考案提唱し、コンバイニングの適用範囲を拡大を図っている。本研究は、一般化されたコンバイニング機構の効果の定量評価および実装コストの見積りをワークステーションクラスタ上のシミュレーション実験とプロトタイプの実機の作製で行おうとしたものである。ワークステーションクラスタ上のシミュレーションは既存のオペレーティングシステム上ではオーバーヘッドが大きくて実用性が少ないため、本研究期間には、ワークステーションクラスタ用のオペレーティングシステムSSS-COREの通信機能にコンバイニング機能を埋め込み可能にし、細粒度通信における一般化されたコンバイニングの有用性を確認した。また、一般化されたコンバイニング機構をハードウェアとして実装予定の並列計算機プロトタイプお茶の水5号の実装も進め、中継ノードにおける待ち時間調整可能な遠隔読み出しのコンバイニングとプロセッサスプペースでのバリア同期のコンバイニングのサポートを完成させた。これらに関しては今後詳細な性能データ採取を行って成果を順次公表していく予定である。
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