次世代インターネットIPv6に関する本研究で掲げた目的は、(1)IPv6の実装、(2)IPv6間の相互接続性の確認、(3)ネットワークアドレス変換技術の提案であった。まず、目的(1)のIPv6の実装であるが、BSD/OS 2.1のカーネルとコマンド群を振動する形でIPv6を実装した。単純な修正は除き、カーネルにおいてプログラミングした行数は1万5千行におよぶ。また、IPv6の管理ツールやアプリケーションを30程度作成した。次に、目的(2)相互接続性を確認するために、日立製作所、慶應大学、および、富士通で独立に製作されたIPv6コンピュータと数度に渡って接続テストを行ない、相互接続性を確認した。さらに、1996年6月と12月にはアメリカのニューハンプシャー大学で開催された相互接続実験に参加し、高い接続性を確認した。また、1996年6月からIPv6の実験バックボーンである6boneを構築し運用している。現在20ヵ国余の研究者が参加している6boneにおいて、我々のIPv6ル-タは中心的なル-タとして位置付けられており、安定して動作している。最後に、目的(3)のネットワークアドレス変換技術では、ネ-ムサーバとトランスレータ・ル-タを用いる方法を提案した。このネ-ムサーバに計算機名をキ-として問い合わせると、IPv6アドレスの代わりにIPv4アドレスが返される。よって、IPv4計算機は、通信対象がIPv6計算機であってもIPv4計算機だと信じて通信を開始できる。途中のトランスレータ・ル-タは、IPv4-IPv6アドレスの対応表を持ち、該当するパケットが到着した場合は変換を施して転送する。これらの機能を満たすプログラムのプロトタイプを作成し、実際に動作することを確認している。よって、本研究の全ての目的を達成できたと言える。
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