1.人間の演奏者同士の協調動作の調査 インタラクティブシステムとしての伴奏システムが人間らしい演奏を行なうためには、実際に人間がどのような演奏制御を行なっているかを知る必要がある。従来、二人の人間による演奏の時間的タイミングに関する研究はまったく行なわれていない。そこで本研究ではプロの演奏家二人に合奏を行なってもらい、その演奏を収録・分析した。演奏のずれとテンポ変化の分析から、新たな知見として以下の三つの結果が得られた。(1)±30ミリ秒程度以内のずれに対しては相手の演奏にあまり影響を受けずに演奏を続ける(2)それ以上ずれた場合には二人のずれを減らすようにテンポを修正する(3)(2)の場合、ちょうど修正するよりも大きなテンポ変化を行なう。30ミリ秒という時間長は、人間が二つの音について、その時間的前後関係を認知できる限界の時間長とほぼ等しく、上記の結果が妥当であると考えられる。 しかし本研究では、二人による演奏データしか収録できなかったため、上記の結論が他の演奏者にも適用できるかどうかについて検討する必要がある。そこで、今後はより多くのデータを収録したい。 2.アコースティック楽器に対する伴奏システムの開発 従来、アコースティック楽器に対して、リアルタイムで伴奏するシステムではそのピッチ抽出精度と反応速度に問題があったが、多重バンドパスフィルタ+ゼロクロス法により、フルートに対して、ほぼ完全なピッチ抽出を行なうことができた。また、時間遅れに対しては、その遅れの量も情報として用いることにより、伴奏システムの枠組の中で扱うことが可能である。今後はこの手法を実際の伴奏システムに組み込む予定である。
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