工学的なパターン認識の処理過程は、観測、前処理、特徴抽出、識別の4過程に分けることができる。また、部分空間法と呼ばれる一連の識別手法においては、識別過程においても、それぞれのカテゴリーの特徴(類内特徴)の抽出を行なう。そして、入力パターンが最も多く含む類内特徴に対応するカテゴリーを識別結果とする。このような認識手法では、類内特徴抽出は他のカテゴリーと区別するための特徴を抽出する過程であり、重要な役割を担っている。代表的な類内特徴抽出法であるCLAFIC(CLAss-Featuring Information Compression)法では、自分のカテゴリーに平均的に多く含まれる特徴を抽出する。しかしながら、そのような特徴は他のカテゴリーと区別するために適したものであるとは限らない。識別に適した特徴とは、自分のカテゴリーに含まれ、他のカテゴリーには含まれないような特徴である.このような観点から、まず、雑音を抑制しながら信号の特徴を抽出するために開発された相対Karhunen-Loeve変換の評価基準を拡張し、着目するカテゴリーの特徴の中で他のカテゴリーのパターンに対してはその大きさが小さくなるような特徴を抽出することができる評価基準を求めた。そして、その評価基準を満たす類内特徴抽出法(相対KL変換法)を具体的に計算する方法を開発した。また、計算機による手書き文字認識実験を行ない、相対KL変換法によってCLAFIC法よりも高い認識精度を得ることができた。このときの実験から得られた認識精度は十分実用的なものであった。さらに、相対KL変換法のための行列を設計するための計算時間は、CLAFIC法の2倍程度であり、1つのパターンに対する処理時間はCLAFIC法とほぼ同程度であった。この実験によって、相対KL変換法は文字認識のための類内特徴抽出法として有効であることを示すことができた。
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