質点・バネ格子モデルに基づく従来の弾性物体モデルのバネの振動発散問題の原因を明確に示し、バネの内部エネルギーに基づく制約を与えた改良されたバネモデルを用いることにより、この振動発散問題を解決する方法を提案した。また、リアルタイム処理が可能となる、シミュレーションの時間分解能と仮想物体の弾性係数との相対的なパラメータの許容範囲を示した。これらについては、C言語のプログラムによりグラフィックスワークステーション上に実際にインプリメントしたシミュレータを用いて、提案したバネモデルの有効性と、パラメータの許容範囲においてリアルタイムで処理が実現できることを確認した。 従来のモデルが実際の物体のもつ線形弾性限界を考慮していなかったのに対し、今回提案した弾性物体モデルは物体が極度につぶされたような、線形弾性限界を考慮したモデルであるといえる。非剛体の仮想物体をより実物に近いものへと改良していくことは、今後実用的な仮想空間操作環境を実現していく上で重要であるが、本研究の成果は、このための重要な基礎技術の一つになりうると考えられる。 電子情報通信学会では、特に優れた論文については、全文英訳され英文誌"Electronics and Communications in Japan"へ掲載されることになっており、本研究成果をまとめた、平成8年11月に電子情報通信学会の論文誌に掲載された"仮想弾性物体の対話操作のためのモデル化と実現"が光栄なことに、この英文誌掲載に選ばれた。
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