交換局と加入者を接続する加入者系は、加入者が増加するにつて、常に回線が増設され、成長を続けるという特徴を持ち、中継網と異なり短期間で設備を更新することが困難な網である。筆者はこれまでにこのような成長する加入者系をモデル化し、高信頼性、低コストな網を構築するためには、事前に基幹となる管路を構築することが効果的であることを示したが、事前敷設をどのように行うべきかについては未解決であった。本研究では、将来の潜在需要を見越した事前敷設をどのように行うべきか、という問題について扱っている。先のモデルで示した信頼性とコストの評価指標を用い、全領域に加入者が発生するまで網を成長させると、信頼性指標として回線が切断された場合の影響を評価した社会的影響Sのみ注目すればよいことを明らかにした。そこで、全領域に加入者を発生させた場合に、どのような形状の網が社会的影響が小さくなるか、Simulated Annealing Algorithmを用いて調べ、網の信頼性が局のごく周辺の管路の形状に左右されることをみた。次に局の東西南北のごく周辺の領域を観察することで、社会的影響Sの最小となるネットワークの構造的特徴を調べた。その結果、S最小の網は、1サイズ小さなS最小の網を成長させて求まる。任意のサイズのSが最小な網の回線数分布などが求めることができること、などの幾つかの仮説をたてることができた。これらの仮説の理論的証明には至っていないが、本モデルにおける信頼性の高い網を構築するための事前敷設には下優先型の事前敷設であること、また新しい加入者を既存の網に接続するときの経路が高々一回しか曲がらない、というモデルの仮定が結果に大きく影響していることが明らかになった。
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