今年度の研究は、まず最初にいつくかの代表的な化学工場の協力をもとに得られた実際のデータを解析することから始めた。これまでの研究で、プロセスの動特性の同定において動特性を正確に把握するための実験計画の方法が不十分であること、プロセスの制御において制御を行う状況が必ずしも動特性の同定を行った状況と一致しないことが問題点として挙げられることが分かっていたが、これらの確認をするとともに、現状をかなり正確に把握することができた。また、実際の工程に携わる運転員のインタビューや実際の工程の調査をデータの解析と並行して行うことにより、プロセスの動特性の同定において無視できない測定誤差が存在する場合があることがわかり、これによって従来の方法をそのまま適用してしまうとプロセスの動特性の把握が正確に行うことができないことが分かった。 今年度は、プロセスの制御において制御を行う状況が動特性の同定を行った状況と一致しない問題を中心に研究を行った。解析の結果、実際のプロセスの制御において、工程平均を変化させる外乱が存在する場合があることが分かった。工程平均を変化させる外乱が存在する場合に、これを無視して制御を行ってしまうと、制御結果にバイアスが生じてしまう。そこで、この工程平均の変化量を推定しながら、なおかつプロセスの動特性を考慮した制御方法を導き出した。結果を、「工程平均が変化するダイナミックプロセスの制御」という題目でまとめ、現在投稿中である。
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