研究概要 |
複雑な社会状況に含まれる各主体の状況に対する認知が異なることから生じるコンフリクトをハイパーゲームの枠組みで記述し,そのゲームを繰り返すことで各主体が持つ認知を学習していく過程を遺伝的アルゴリズムを用いて分析した. これまでの研究では二人ハイパーゲームにおいて一方のみが認知を学習し,他方は「自然」であるという仮定のもとに学習しない場合が扱われていた.本研究では,社会集団に含まれる各主体が同時に並列的に状況認知を表す自己の利得行列を改善する方法を明らかにした. 具体的には,利得行列を学習するプレーヤは集団を構成し,各自のゲームの結果の情報を交換する「ネットワーク型意思決定」を行うと仮定し,ゲームの結果をもとに二つの集団の各プレーヤは同時並列的な情報交換を行い,各自の利得行列を変更する.各自の利得行列は遺伝的アルゴリズムにおける適応度関数によって評価されるが,適応度関数の設定に依存して交換される情報の有効性が決定される. 本研究では特に,自律的主体の状況認知の学習のためには,ゲームの直接的な結果だけでなく,それらを集団内で交換することにより,状況に対する大域的な情報として解釈することが必要なことを主に明らかにすることができた.本研究の結果は,自律的主体からなる多主体系における状況認知の学習過程のモデルの構築に貢献することができる.
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