研究概要 |
本研究では,我が国におけるコンピュータシステムの消費電力に関する実施調査を行い,コンピュータ上で実現可能な省電力のソフト化技術を開発した.まず最初に,コンピュータシステムの使用形態を実施調査し,コンピュータへのアクセス時間間隔と各ユーザーの使用時間ならびに各トランザクションの処理時間データを測定した.確率プロットによる統計分析を行った結果,コンピュータへのアクセス時間間隔と処理時間の年齢特性はDFR(decreasing failure rate)特性を示すことが判明した. 続いて,コンピュータの製造カタログから,コンピュータの使用時とスリ-プモード時の平均消費電力を求め,定常状態における単位時間当たりの期待消費電力を最小にする,もしくはコンピュータの使用時間と消費電力を関係づける電力有効性と呼ばれる評価尺度を最大にする自動スリ-プスケジュールを生成するための確率モデルを構築し,解析を行った.考察を行ったモデルは二種類であり,スタンドアローン型デスクトップコンピュータにおけるマルチユーザー使用環境に対応する再生過程モデルと,コンピュータネットワーク上でのバッファ処理を要する待ち行列モデルに分類される. もし,コンピュータを使用するユーザーのアクセス要求過程がマルコフ性を有するならば,コンピュータシステム上で任意のバケーション期間を伴う自動スリ-プ機能は設定すべきでないことが証明された.このことは,コンピュータアクセス要求の頻度が一定であるようなシステムに対しては,常時スリ-プモードに移行するか全くスリ-プ機能を持たせないことが最適となり,現実のシステム運用の方法に疑問を投げかける結果となった.また,計測データに基づいて省電力化スケジュールを実施する場合,期待消費電力と電力有効性を解析的に表現するためには近似が必要であり,本研究では計三種類の近似アルゴリズムを提案した.最終的に,本研究で提案した省電力化技法は,コンピュータシステムの消費電力をソフト的に削減するためには有効な方法であり,今後実用化が期待できるものと思われる.
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