従来、短パルス電子源としてはSバンド電子線形加速器とLバンド線形加速器が代表的であり、そのパルス幅は、それぞれ約10ps、約20ps程度である。これよりも短い電子線パルスを作ろうとする試みはかなり以前からあり、1989年アルゴンヌ国立研究所のLバンドライナックにおいて磁気パルス圧縮法を用いて5psの電子線パルスが生成された。磁気パルス圧縮法は電子線パルスにエネルギー変調をかけ、1パルス内のエネルギー差をマグネット系を用いて軌道差に変換し、進行軸方向のフォーカスを行う方式である。また、新しい加速マイクロ波としてXバンド(11.424GHz)が注目されており、現在、スタンフォード加速器センターおよび高エネルギー研究所で研究されており、加速管のパワー試験が行われている。近い将来、加速試験が行われる予定である。 本研究ではXバンド加速器に磁気パルス圧縮を適用することにより、フェムト秒の超極短パルス電子線の生成が可能であるかを検討した。入射器系に関しては、電子銃テストベンチを制作し、熱電子銃の高速応答性能を測定した。この結果を基に、電子輸送計算コードPARMELAを用いフェムト秒Xバンド加速器の設計及び加速シミュレーションを行った。本研究で設計したフェムト秒Xバンド加速器は200kV熱電子銃、476MHzSHB、2856MHzプレバンチャー、11.424GHzバンチャー付き加速管、11.424GHz加速管(エネルギー変調用をかねる)、磁気パルス圧縮器から構成される。ビームの収束はソレノイドマグネットで行うことを想定した。電子銃テストベンチで得られたビームパラメーターで計算を行ったところ、最終的に100fsまで電子線が圧縮されることを確認した。この結果からXバンド加速器はフェムト秒加速器として非常に有望であると結論できる。
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