使用済み核燃料の乾式再処理プロセスにおいて、燃料を電解によって大部分取り除いた後、析出電位が浴塩よりも卑な金属であるセシウムやストロンチウムなどが残留する使用済み塩の処理が問題となっている。そこで、浴塩中に残留する希薄な燃料物質と核分裂生成物を向流電気泳動法により濃縮分離し、さらに、核分裂生成物同士を各種液体金属との親和性を利用して電解し選択回収するための実験を行った。まず、核分裂生成物のうち、セシウム、ストロンチウム、カドリニウムが浴に含まれる溶融塩の向流電気泳動実験を行ったところ、各元素とも分離管の陽極付近で浴塩での組成より濃縮されていることが明らかとなり、浴塩を構成する陽イオンとの移動度差の値をそれぞれの元素で比較すると、ストロンチウム、ガドリニウムの値がセシウムの値より大きく、陽イオンの価数の違いを利用した相互分離が可能であることが分かった。また、本研究の直前に行われたウランが希薄に含まれる溶融塩の結果と比較すると、ウランの移動度差の値は希土類金属の値より大きく、燃料と核分裂生成物の分離にも向流電気泳動が有効であることが示された。さらに、ユウロピウム、ストロンチウムを浴塩に対して1モル%含む溶融塩から、5種の液体金属(鉛、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、スズ)を用いて電析により回収できるかどうかを検討するために、サイクリックボルタンメトリーおよびクロノポテンショメトリーを測定し、使用後の液体電極を分析したところ、ユウロピウムに対しては液体鉛およびアルミニウム、ストロンチウムに対しては液体鉛によって浴塩から選択的に回収できることが明らかとなり、選択率の違いおよび液体金属電極の使い分けによってユウロピウムとストロンチウム同士を選択回収することができることが分かった。
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