本研究においては3次元シリコン材料と1次元シリコン材料である直鎖ポリシランの間を埋める、化学的に骨格次元性を制御したポリシランの合成、及び主鎖にゲルマニウム原子を導入した共重合体の合成を行い、電子線パルスラジオリシス法による過渡吸収スペクトル測定から、これら非炭素14族骨格の電子構造についての知見を得た。またこれらの骨格次元性制御が実際の物性に与える影響について、特に正孔移動度の測定により評価を行うと共に、放射線照射による架橋・分解反応にともなったシリコン骨格の次元性変化について、化学的に次元性制御を行った場合との比較を行った。 これまでポリシラン主鎖骨格への分岐構造の導入は、高分子構造上1次元ポ直鎖リシランから2次元骨格構造を有する平面状ポリシランへの過渡材料を創成し、骨格次元性を高次元化するものとしてとらえてきた。しかし本研究で電子線パルスラジオリシス法による過渡吸光分析による知見では、むしろ1次元直鎖ポリシランよりも低次元化、すなわち0次元シランやジシラン分子と1次元直鎖ポリシラン分子との間の過渡分子であるとの結論を得た。ケイ素-ゲルマニウム共重合体においては、骨格次元性変化は認められず、主鎖上に広いσ共役を形成していることが明らかとなった。このσ共役の程度はゲルマニウムの導入比を変えることで連続的に制御可能である。イオンラジカルの電子および正孔の非局在化の程度もゲルマニウム導入比に影響される。 一方で、化学的な方法による主鎖骨格への分岐構造の導入とは対照的に、ポリシランにビームを照射した場合、ビームの飛跡に沿って円筒状に高分子架橋反応が促進されると考えられる。これらの高分子の光伝導性測定により、高分子構造上1次元ポ直鎖リシランから一躍3次元骨格構造を有するポリシランを創成し、結果として高次元化された骨格構造を持つシリコン材料が得られたものと考えられる。
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