赤外線サーモグラフィーは、遠隔非接触のリモートセンシングで物体表面から放射される熱放射エネルギーを感知し、二次元の熱画像として情報を提供することを特色としている。しかも比較的広範な領域を逐次探査可能である。この方法は、これまで単に物体表面の温度分布を可視化的に把握する手段として利用されてきたが、物体表面温度場の歪みから逆に隠れた物体内部を探査することには利用されていなかった。また探査のメカニズム、その伝熱機構および探査限界などは、当然明らかにはされていなかった。このことから本研究では、まず赤外線サーモグラフィーによる探査技法の基本的事項を明確にし、表層地下人口埋設物(埋設地雷、埋設危険物など)の探査へと応用した。すなわち、実験室スケールにて様々な材質・内部状況を有した試験片について探査の基礎的検討を加えた。次いで、専用砂場の表層地下に熱エネルギー(太陽熱入射、人工熱入射)を付加することによって人工埋設物上部地表面に発生する温度分布の歪みから対象物を検知する方法とその有効性について実験的な検討を加えた。同時に、数値シミュレーションを実施することで、探査の数理モデリングを行い、探査に付随する伝熱機構や探査限界(探査可能深度、対象物規模および材質など)を明らかにした。 本研究で得られた知見は、要約すると以下のようになる。1)赤外線サーモグラフィーは、表層地下人工埋設物の探査に有効な手法であることを確認した。2)探査可能深度は、本実験の範囲内において、200mm程度である。3)赤外線サーモグラフィーは、森林地帯よりもむしろ砂漠などの比較的表面の放射率が均一な場所での探査に有効である。4)本研究で提案した数理モデルが実際の物理探査現象を模擬する上で有効なものであることを確認した。
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