研究概要 |
現在、水銀による環境汚染はアマゾンをはじめとする世界各地で進行しており、環境からの水銀の除去は早急に解決されなければならない問題である。そこで筆者は水銀耐性菌(Pseudomonas K-62)の水銀代謝機構を遺伝学子レベルで解明するこよにより、微生物を利用した水銀浄化モデル系を確立することができると考えた。筆者はこれまでの研究において以下の知見を得ていた。本菌のpMR26上に存在する水銀耐性遺伝子を含む遺伝子断片の大腸菌へのクローニングに成功した。また、本菌の水銀耐性遺伝子を形質転換した大腸菌は水銀耐性をあらたに獲得していることを見出した。 本年度はこの水銀耐性遺伝子の構造及び機能を解析することに焦点を合わせ、以下の知見を得た。本遺伝子の塩基配列決定を行った結果、merR (regulator)、operator/promoter、merT (transport protein)、merP (mercury binding protein)、merA (mercuric reductase)、ORF (open reading frame)、及びmerBl (organomercurial lyase)から成るmerオペロンを形成していることが明らかとなった。さらに、水銀の輸送におけるmerT-merPの関与について検討したところ、merT-merPは無機水銀および有機水銀であるフエニル水銀の菌体内への輸送に関与することが明らかとなった(Y.Uno,M.Kiyono et al.,1997 Biol Pharm Bull)。水銀化合物を菌体内へ取り込む能力を持つmerT-merPは環境中に存在する水銀化合物の回収の役立つことが期待される有用遺伝子であると考えられる。
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