山村・志津里らは夜間でも葉を開かせておく覚醒物質レスペデジン酸カリウム、イソレスペデジン酸カリウムをマメ科植物のメドハギより単離し、従来、葉を閉じさせる物質の濃度変化のみでコントロールされると考えられていた植物の就眠運動が、就眠・覚醒両物質のバランスによって引き起こされる可能性を示唆した。しかし、これに対応するメドハギの就眠物質を得ることが出来ず、この単離・構造決定が待たれていた。申請者は、覚醒物質の場合と同様にカワラケツメイの葉に対する活性を指標として、メドハギ抽出物より1×10^<-7>mol/Lの濃度で有効な就眠物質Potassium D-idarateを単離し、合成により確認した。この物質は、覚醒物質と1×10^<-6>mol/Lの濃度で拮抗作用を示した。さらに、昼夜採集し得られたメドハギ抽出物がそれぞれ開葉・閉葉と逆の生物活性を示したことから、就眠運動はこれら二つの活性物質の濃度バランスの変化によって支配されていることが明らかになった。 また、ネムノキは、就眠運動を行う植物としてもっとも著名であるが、従来法での生物検定が適用できず、研究は困難であった。申請者は、新たに開発したネムノキの幼葉を用いた生物活性試験を指標として、1×10^<-5>mol/Lの濃度で有効な覚醒物質cis-p-coumaroylagmatineを単離・構造決定し、化学合成により確認した。これは、オジギソウ、クサネム、コミカンソウに対しては1×10^<-2>mol/Lの濃度でも全く活性を示さなかったが、興味深いことにカワラケツメイに対してのみ1×10^<-2>mol/Lの濃度で活性を示した。現在、この覚醒物質に対応するネムノキの就眠物質の探索を検討している。
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