リボソーム阻害酵素は抗エイズ剤としても用いれているグルコシダーゼで、蛋白質の生合成に必要な28SrRNAを基質とし、そのステム領域に存在する4324-アデニンとリボースとのグルコシド結合を特異的に加水分解する。結果として、28SrRNAは他のmRNA翻訳に必要な因子との相互作用を失い、ウイルスの生存に必要な蛋白質の生合成が不可能となる。本研究では、この酵素のどのアミノ酸残基が活性を維持するために必要であるかを検討することにした。 ウリ科、イネ科をはじめ様々な植物の種、葉、根等に存在するリボソーム阻害酵素のアミノ酸配列の比較により、N-末端は極めて高い類似性を示していることが見出された。また、この領域には、グルコシデーションの際にプロトン供給源として働きうるアルギニン残基(R)とプラスチャージの反応中間体を安定化すると考えられるグルタミン酸(E)がそれぞれ2つずつ存在することがわかった。そこで、下に示す2つのペプチド(E23-K42、E23-L40)を合成し、それぞれのルシフェラーゼmRNA翻訳の阻害をうさぎのレティキュロサイトライセ-トを用いたインビトロ蛋白質生合成の系で検討した。ルシフェラーゼの生成量をルシフェリン酸化に伴う発光の写真撮影で比較した結果、1)いずれのペプチドも蛋白質生合成を阻害するが、2)阻害作用はE23-K42の方はE23-L40より強いことが明らかになった。従って下に*で示したアルギニン残基は阻害率に影響を与えるものの阻害作用に不可欠ではない。そこで、プロトン供給源として働く残基は、もう一つのアルギニン残基あるいはヒスチジン残基でありうると考えられる。今後、この可能性について検討するとともに阻害率をルミノメーターを用いて定量化する計画である。 * E23-K42 ELRVKTKPEGNSHGIPSLRK E23-L40 ELRVKTKPEGNSHGIPSL
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