研究概要 |
RACプロテインキナーゼ(別名PKB、c-Akt)はそのアミノ末端側にプレックストリン相同(PH)領域を有するセリン/トレオニンキナーゼであり、活性触媒領域はプロテインキナーゼC(PKC)に類似している。 近年、RACプロテインキナーゼは細胞増殖因子刺激に伴い活性化されたホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3-キナーゼ)により産生される、ある種のPI3リン酸により活性化されることが明らかにされた。我々は、この活性化とは異なるストレス刺激によるRACプロテインキナーゼの活性化機構の存在を明らかにした。すなわち、細胞を高温や高浸透圧条件で処理することによりRACプロテインキナーゼの活性上昇が認められ、また、高温による活性上昇はPI3-キナーゼの特異的阻害剤であるwortmanninにより阻害されず、PI3-キナーゼの働きに非依存的であることが示唆された。さらに、高温により活性化されたRACプロテインキナーゼを細胞より効率的に精製する系を確立し、種々セカンドメッセンジャー分子のRACプロテインキナーゼ活性に対する影響を解析した結果、PH領域結合能を有するPI(4,5)二リン酸が特異的にこの活性を阻害することを明らかにした。今後、細胞増殖因子およびストレス刺激による活性化はいずれもPH領域を必要とすることから、これらの活性制御機構の詳細を明らかにすることを目的とし、PH領域に相互作用する分子の同定などを含め解析を行っていく予定である。
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