Cdc7類似キナーゼcDNAをヒトおよびカエルより単離し、その遺伝子産物に対する特異的な抗体を作製して、それらを用いて以下の実験結果を得た。(1)ヒトCdc7蛋白質は細胞周期を通じてほぼ一定の発現量を保つ。大部分のCdc7蛋白質は核内に存在し、Interphaseの細胞では、常時核内に局在する。カエルCdc7蛋白質は卵抽出液中多く不溶性画分にある。(2)核内Cdc7蛋白質はDNaseI処理あるいは、0.5%Triton処理によっては溶出されない。このことは、Cdc7蛋白質が核内構造物に局在していることを示唆するものである。(3)キナーゼ活性を喪失した変異型Cdc7の過剰発現のみでは、細胞の増殖や細胞周期に変動を与えなかった。(4)ヒトCdc7キナーゼはin vitroでMCM蛋白質をリン酸化した。おそらく、Cdc7キナーゼは、MCMの機能を調節することにより、DNA複製開始を制御しているものと考えられる。(5)ヒトCdc7転写産物は、睾丸、胸線、脾臓などで多く発現されている。睾丸特異的な短いCdc7転写産物は、Cdc7蛋白質C末端側領域に相当する断片を含まない。ヒト、マウスCDC7遺伝子産物には、欠失変異あるいは、短いDNA断片の挿入によるフレームシフトなどの変異による異型が複数存在するがその意味は不明である。
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