イカの視細胞より精製した光受容膜上の蛋白質を界面活性剤で可溶化し、脂質を加えた後、透析法により界面活性剤を除き、カルシウムを内包したリポソーム上に再構成を試みた。リポソームが形成されていることは、暗視野顕微鏡の観察により確認した。再構成リポソームにカルシウムイオノファ・A23187を加えると外液カルシウムの濃度が上昇することから、リポソームにカルシウムが内包されていると判断した。基本的な実験系は、確立されたので、次に、再構成リポソーム系に、チャンネル開閉制御因子の候補となるIP3、deacylglycerol、cGMP、cAMP、cADPリボースを加えたが、外液カルシウム濃度に変化は認められなかった。同様の手法で、ウシの視細胞の光受容膜の蛋白質を再構成するときは、cGMPでカルシウム濃度の変化が認められるので、イカの結果は、リポソーム作成の実験技術上の問題ではなく、チャンネルが再構成されていないことによる可能性が高いと判断された。一方、イカの光受容膜の界面活性剤不溶性画分から、高塩濃度条件下の界面活性剤により抽出される蛋白質(HDS分画)が存在することを見いだした。このHDS分画を脱塩処理した後に、リポソームへ組み込んだところ、カルシウムを内包するリポソームの量が著しく減少した。カルシウム感受性色素を内包するリポソーム上に再構成し、外液カルシウム濃度を変化させる実験を行った結果、HDS分画の蛋白質を組み込むと、穴の開いた状態のリポソームが、多いことが確認された。この結果より、チャンネルが、開いた状態で組み込まれている可能性が考察される。また、HDS分画に対して、IP3親和性カラムを使い、3種類のIP3結合タンパク質を検出した。今後、HDS分画に含まれるチャンネルを閉じた状態でリポソームに組み込む条件の検討を進める計画である。
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