研究概要 |
DNAポリメラーゼ_α/プライマーゼ複合体(pol._α)は染色体複製におて新生DNA鎖の合成開始を司る複製酵素である。私達はpol._αの機能と構造を明らかにすることで、複製開始のメカニズムやcheckpointの機構を解明することを目指している。マウスのpol._αは4つのサブユニット(p180,p68,p54,p46)から構成されている。今回動物培養細胞を用いたcDNA発現系により、ポリメラーゼ触媒サブユニットであるp180とこれまで機能不明であったp68の蛋白質間相互作用について検討した。 両サブユニットのcDNAをSR_αプロモーターの下流に組み込み、COS-1細胞やNIH3T3細胞へエレクトロポレーション法により導入した。p180によるポリメラーゼ活性はp68と同時に発現させることで顕著に増加することを見出した。Western Blot法により、p68の存在下ではp180の蛋白レベルでの発現量が増加しており、その結果、ポリメラーゼ活性が増産されていることが判明した。またp68との相互作用は、p180のC末端にある核移行シグナルを提示することにも必須であることも見出した。即ちp180を単独で発現させても細胞質に局在するが、p68とco-transfectionすることで、両サブユニットが核へと移行することを蛍光抗体染色法により見出した。また、様々な欠失変異体や置換変異体を用いて、両サブユニットの結合に関わる領域、核移行シグナル、また酵素活性に必須な領域、について知見を得ることができた。以上の結果は、p68が触媒サブユニットの酵素活性や局在部位を調節する役割を担っていることを示唆しており、ポリメラーゼ活性の制御機構の標的としてp68が機能することが推察された。
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