これまでにショウジョウバエの遺伝子glial cells missing (dGCM1)を同定し、これが神経細胞とグリア細胞の間の分化スイッチとして機能することを示した。dGCM1は新しいタイプのタンパクをコードしていたので、今年度はこれがどのような機能部位を持つかという点と、分子ファミリーを形成するかという点とに重点をおいて研究を行った。 ヒト胎盤由来cDNAのEST (Expressed Sequence Tag)ライブラリーを検索したところ、dGCM1と高い相同性を示す遺伝子が見つかり、hGCMaと名付けた。さらにdGCM1とhGCMaの間で保存された配列をもとにPCRを行い、マウスの2つのgcm遺伝子mGCMaとmGCMbとを得た。これら4つのgcm遺伝子のコードするタンパクはいずれもN末端の150残基ほどの領域に約60%の共通なアミノ酸を持っており、これをgcm-motifと名付けた。 当研究室の秋山らの実験により、dGCM1タンパクのgcm-motif部位が特定の8塩基の配列を認識してDNAに結合することが明らかになった。hGCMaのgcm-motif部位もこの配列に特異的に結合することから、gcm-motifは新しいタイプの塩基配列特異的なDNA結合モチーフであることがわかった。この結果からgcmはgcm-motifを共通配列として持つ新しい転写調節因子ファミリーを形成すると考えられる。 マウスの2つのgcm遺伝子mGCMaとmGCMbの発現を調べたところ、前者は胎盤で、後者は胎仔の脳で発現が見られ、これらの組織の発生過程への関与が示唆された。現在機能解析実験を行っている。
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