高度好塩菌(Halobacterium salinarium)の光プロトンポンプ蛋白質、バクテリオロドプシンの活性部位近傍の高次構造解析および、バクテリオロドプシンに類似の高次構造を持つG蛋白質共役型受容体の膜表面信号伝達部位の構造の予測を目的として、レチナ-ル近傍のα-ヘリックス構造および膜表面の親水性部位の高次構造を固体^<13>C NMRにより解析した。 膜の細胞質側に位置するバクテリオロドプシンC末端部位(残基228-248)は蛍光プローブ等を用いた研究から無秩序な構造をとるとする報告と一部に構造を持つとする報告があったが、アラニン側鎖メチル炭素の^<13>C NMR化学シフト値からC末端部位にはα_<II>-ヘリックス構造(16.4ppm)が見い出され、パパインによる加水分解処理によるスペクトル変化から残基228-235に帰属された。この膜表面に突出したα_<II>-ヘリックス構造はpH、温度に依存して構造変化し、低pH(〜4.25)ではランダムコイルをとり、低温(<10℃)では15.7ppmのシフト値を持つα-ヘリックス構造を形成する。このことから、蛋白質共役型受容体の膜外部位における秩序構造の存在と環境の変化にともなう膜外部位の高次構造変化の可能性が示唆された。一方、光プロトンポンプ活性の中心であるシッフ塩基近傍の膜貫通ヘリックス部位に位置し、光反応の際に高次構造変化が予測されるα-ヘリックスのキンク部位近傍に位置する49位バリンをアラニンに置換した変異バクテリオロドプシンの固体^<13>C NMR測定の結果、キンク部位近傍のヘリックス構造は16.6ppmに化学シフト値をもつα-ヘリックス類似の構造に帰属され、この構造は近傍のループ部位(71-72位)の加水分解により影響を受けないことが明らかとなった。現在、これらの活性部位、膜表面部位の高次構造に注目し、光反応時のバクテリオロドプシンの高次構造変化を解析中である。
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