研究概要 |
大腸菌の転写因子であるCRPはその結合部位の転写開始点からの相対位置によって、転写活性化の分子機構が異なることが示唆されてきた。私は転写開始複合体の形成に着目して、その構造機能とCRPの作用機構について解析を行い、以下の結果を得た。 1.CRP結合部位の位置の異なる典型的なCRP依存プロモーターであるmalT,galの系において、転写開始複合体からCRPをヘパリを用いて選択的に解離させることに成功した。また、CRP-RNAポリメラーゼ相互作用の強度と結合部位の距離との相関関係が示唆された。 2.いずれのプロモーターにおいてもCRP除去により、転写開始複合体の構造に大きな変化は見られず、CRPの転写開始複合体の構造、及び安定性への寄与を否定した。さらにこの結果生じた転写複合体が転写活性を十分保持していることから、CRPの作用はプロモーターにおけるその結合部位の位置にかかわらず転写開始複合体の形成までであることが結論された。 3.以上の解析中にCRPの転写開始複合体形成以降への寄与が示唆されていたmalTプロモーターにおいてCRP非存在下でRNAポリメラーゼは転写活性をもたないnonproductiveな転写複合体を形成することを見いだした。 現在、性質の異なる転写複合体について分子生物学的解析を進めており、RNAポリメラーゼの機能とプロモーター活性について新しい知見が得られることが期待される。またCRPによる活性化型転写複合体の形成機構について解析を進めている。
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