MDA231細胞でのuPAのmRNA安定化機構の解析 ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)のmRNAはヒト乳ガン細胞MDA231で8時間という長い半減期を示す。一方、ブタ上皮細胞LLC-PK1では同じmRNAが30分という短い半減期を示す。グロビン遺伝子の3'非翻訳領域にuPA mRNAの3'非翻訳領域を接続したレポーター遺伝子のmRNAの安定性の解析から、MDA231細胞ではAU-rich element(ARE)が不安定性に寄与しないことが明らかになった。AREは癌遺伝子やリンホカインのmRNAの3'非翻訳領域にあり、これらのmRNAを不安定化することが知られ、またLLC-PK1においても、uPA mRNAを不安定化することをすでにわれわれは報告した。我々はAREに特異的に結合する40kDaの細胞質蛋白(p40)を同定した。p40の発現レベルはMDA231では高くLLC-PK1では低かった。さらにLLC-PK1細胞にPKC-down-regulationをおこすと内在性uPAのmRNAが安定化するが、この条件下でp40の発現レベルが上昇することがわかった。細胞質画分をhnRNP Cに対するモノクローナル抗体で前処理するとp40の結合活性が著しく低下することから、p40はhnRNPC自体か関係する蛋白であること、AREを介した分解からmRNAを守っていることが示唆された。細胞質画分をアルカリホスファターゼで処理するとp40の結合活性は強く阻害される。細胞に対しp38 MAP kinaseの特異的な阻害剤を投与すると、AREを3'非翻訳領域に接続したグロビンmRNAは劇的に分解が促進される。従ってAREを介したmRNA分解はp38 MAP kinaseが関るシグナル伝達の経路にあることが示唆された。
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