最初に2-ヒドロキシアデニン(2-OH-A)を含むDNA断片を高収率かつ簡便に合成可能なホスホロアミダイト体を化学合成した。これをビルディングブロックとして用い、DNA自動合成機を用いて2-OH-Aを含むオリゴヌクレオチドを合成した。逆層HPLC、イオン交換HPLCを用いてオリゴヌクレオチドを高純度に精製した。対照として未修飾(2-OH-Aの位置にアデニンを含む)オリゴヌクレオチドを同様に合成、精製した。 上記の合成オリゴヌクレオチドをDNAポリメラーゼ反応の鋳型とし、プライマーとアニーリングさせて用いた。鋳型は、2-OH-Aの前後の配列が異なる12種類を用意した。DNAポリメラーゼとしては、大腸菌由来のクレノ-断片、哺乳動物細胞由来のDNAポリメラーゼα、βを用いた。 まず、反応系に1種類のヌクレオチド(dNTP)を加えて、プライマーの伸長を観察した。その結果、全体としては、クレノ-断片はdTTPとdGTPを、ポリメラーゼα、βはdTTPとdCTPを取り込んだ。また、5'TA^*A3'配列(A^*は2-OH-A)では、いずれのポリメラーゼもdTTPとdATPを取り込んだ。さらに、DNA鎖伸長反応の際に、4種類のヌクレオチドを添加し、完全鎖長に達した反応産物の塩基配列を調べたところ、上記の結果が確認された。 以上の結果を踏まえて、ヌクレオチド取り込みと鎖伸長反応のkineticsを測定している。5'TA^*A3'配列を持つ鋳型DNAを用いての実験は終了しており、2-OH-Aが、ミスコードする性質を有していることが、kineticsからも裏付けられた。現在、他の配列を用いての実験を行っている。
|