大腸菌において潜在的に細胞分裂の場所となりうるのは、細胞の両極および中央の少なくとも三箇所であり、そこへのFtsZの局在が分裂に必須であると考えられる。本研究では、FtsZの正常な局在に必須な因子が存在すると考え、このような因子の同定をFtsZとの結合能を指標にして、酵母2ハイブリッドシステムを用いて網羅的にスクリーニングを行なった。その結果以下の知見が得られた。 1.FtsZとGal4 DNA結合ドメインの融合タンパク質を酵母に導入すると、これだけでレボーターの発現が見られた。このことは本研究のスクリーニングの過程ではレポーター発現の阻害剤添加が必要となることを意味する。 2.上の制約にも関わらず、本実験系において、細胞分裂阻害因子として知られるSulAとFtsZタンパク質と直接相互作用することが示された。しかしながら、FtsZ間の相互作用は本実験系では検出することができなかった。この結果はFtsZはGTP依存的にフィラメントを形成するが、このような性質のタンパク質間相互作用を検出するのは2ハイブリッドシステムでは困難であることを示唆している。 3.FtsZと相互作用するタンパク質のスクリーニングにより有意な結合能を持つクローンを得ることはできなかった。これは、先に述べた実験系における技術的制約から来たものであると思われる。
|