p38/Mpk2キナーゼはMAPキナーゼスーパーファミリーに属し、熱ショック、高浸透圧、炎症性刺激などによって一過的に活性化するシグナル伝達因子である。我々は、酵母MAPキナーゼ系突然変異体における機能相補を指標としてp38/Mpk2のショウジョウバエホモログ(DmMpk2、哺乳類p38とのアミノ酸配列同一性69%)cDNAを得て、個体発生における機能探索を進めてきた。DmMpk2は、熱ショック直後にチロシン残基リン酸化状態が上昇するため、p38/Mpk2と同様にストレス応答のためのシグナリング経路を構成する分子であると考えられたが、遺伝学的な実験から、DmMpk2がTGF-βスーパーファミリーの一員であるDppのシグナル伝達因子として挙動することを見い出した。すなわち、ドミナントネガティブ型DmMpk2は、constitutive active型のDppレセプターによる表現型を抑圧する。また、生化学的な実験から、constitutive active型のDppレセプターの発現によって、DmMpk2のチロシン残基リン酸化状態が上昇することが判明した。これらの結果は、DmMpk2がclassical MAP kinaseと同様に、形態形成シグナルの作用時にシグナル伝達因子として機能することを示している。哺乳類培養細胞においても、TGF-β刺激によってp38/Mpk2のリン酸化状態が弱く上昇することが最近知られるところとなり、p38/Mpk2を含む経路は、広くTGF-βスーパーファミリー応答のためのシグナル伝達経路として利用されている可能性が示唆される。
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