ペルオキシソームは真核細胞生物に広く存在する細胞小器官であり、脂肪酸のβ酸化系をはじめ種々の機能を有している。本研究ではペルオキシソーム形成過程に必要なタンパク質因子の解明のために以下の実験を行った。 これまでCHO細胞より3つの異なった相補性群に属するペルオキシソーム欠損変異細胞を単離、解析してきた。しかしながら、さらに新しい相補性群に属する変異細胞を分離する試みは、F相補性群の細胞と同じものが異常に高い頻度で得られるために非常に困難であった。我々はこの原因はCHO細胞のPAF-1遺伝子が1コピーであるためと考え、すでにクローニングされたPAF-1cDNAを導入しコピー数を増加させた細胞株をペルオキシソーム欠損変異細胞分離のための親株とすることでこの問題を解決した。現在までにCHO細胞で、6つの相補性群に属する変異細胞を得た。つぎに、我々がすでに単離したPAF-1、2と相互作用をする因子を酵母two-hybrid系により同定を試みた。ラット肝臓cDNAライブラリーをスクリーニングしたが、現在のところ、有望なものは得られていない。また、酵母PEX遺伝子群とのホモロジーを利用したヒト相同遺伝子の同定を行った。ペルオキシソームの形成過程については、主に海外で、種々の酵母からペルオキシソーム欠損変異体の分離、および相補遺伝子のクローニングがなされている。このうちPEX7にホモロジーのある、ヒトおよびマウスのESTクローンをデータベース上で見いだし、これがRCDPというペルオキシソーム異常症患者由来の細胞の異常を相補することを確認した。また、酵母PER10のヒトホモログについてもESTクローンを見いだし、これがヒトPEX5と相互作用することを酵母two-hybrid系により確認した。
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