mgl-1ならびにmgl-2遺伝子は、ショウジョウバエの癌抑制遺伝子である1(2)gl遺伝子のマウスホモローグであり、既知の機能ドメインをもたない新たな遺伝子ファミリーを形成している。本研究では、mgl遺伝子ファミリーの生体内における機能をジーンターゲティング法により解析した。mgl-1ホモ接合体変異マウスは胎生致死ではないが、その90%以上が生後2日以内に死亡した。これらのmgl-1ホモ接合体は外見的に水頭症が明らかであった。発生過程では脳室内の出血、脳における神経上皮様細胞のクラスター形成、ventricular surfaceの不整等、神経上皮の異常が認められた。これらの結果からmgl-1遺伝子は神経上皮細胞の増殖と分化の制御に必須の機能を果たしていると考えられた。 mgl-2ホモ接合体変異マウスは胎生致死ではないが、その約15%が生後24時間以内に死亡する。生き残ったものは特に異常をみとめない。またホモ接合体はすべて胎生16.5日目から矮小化が明らかであり、出生後はホモ接合体の体重は野生型、ヘテロ接合体の約70%の体重で推移した。これまでの研究で胎生後期からの矮小化の原因遺伝子であることが明らかにされているIGF1、IGF1r、IGF2、HMGI-c遺伝子の発現をノーザンブロッティング法により調べたが、mgl-2ホモ接合体ではこれらの遺伝子はいずれも発現しており、野生型およびヘテロ接合体と比較して発現量の低下も認められなかった。したがって、少なくともこれらの遺伝子の上流でmgl-2遺伝子が機能しているのではないことが示唆された。 mgl-1とmgl-2遺伝子の発現パターンならびにそれぞれを欠失したマウスの解析結果から、mgl-1とmgl-2遺伝子との間には機能的代償性が示唆された。そこでmgl-1・mgl-2ダブルノックアウトマウスを作成したところ胎生8.5日目に死亡することから、mgl遺伝子はファミリーとしてマウスの発生に必須の機能を果たしていることが明らかとなった。
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