今迄の研究成果に基づき、ビタミンAがミッドカイン(MK)とTGF-βをメディエーターとしてどの様に細胞機能を調節し、病態に関与しているかを明らかにすることを目標として、 1.ビタミンAがダイレクトに内皮細胞の遺伝子発現を調節するメカニズムを解明するとともに、血管新生に与える影響を(1)培養血管内皮細胞の増殖能、遊走実験、並びに各種関連遺伝子の動態、(2)鶏卵の漿尿膜を使ったin vivo実験系において評価する。 2.ビタミンA刺激により生成したTGF-βが、肝繊維化を引き起こしているかどうかを(1)培養伊東細胞のコラゲン合成能、伊東細胞と肝実質細胞との共培養における実質細胞の血清アルブミンの合成能、(2)ブタ血清投与ラット肝硬変モデルにおいて評価する。 3.加えて、内皮細胞中に見い出だされた高分子MK複合体の正体を明らかにし、その生理的役割を調べる。 の3点について実験を行った結果、 1.ビタミンAは核内受容体RARと転写因子Sp1との相互作用を通しuPA遺伝子の転写を促進していることがわかり、現在、両者の物理的相互作用について調べている。また、ビタミンAは、内皮細胞におけるTGF-β受容体の発現を促進し、培養内皮細胞の増殖、遊走を抑制、漿尿膜上の血管新生を顕著に阻害した。 2.ビタミンAは、TGF-βの産生・活性化を介して伊東細胞のコラゲン合成を高め、実質細胞の血清アルブミン合成を阻害することを見い出した。また、動物に直接線維化を引き起こしはしなかったが、ブタ血清投与によるラット肝線維化・肝硬変を顕著に増悪させた。 3.MKがトランスグルタミナーゼによって二量体を形成することが、MKのPA促進活性に大事であることを、架橋反応に携わるGln残基を決定し、Gln残基を含む合成ペプチドを用いることで証明した。今後は二量体を精製し、まだ単離されていないMK受容体を解析するツールとする予定である。
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