研究概要 |
1、プラナリアG蛋白質の解析:三量体G蛋白質αサブユニットに加えプラナリアの低分子量G蛋白質ADP-ribosylation factor(ARF)を見出し、そのcDNAをクローニングした。このプラナリアが多量に発現するARFはN末に特徴的な配列を持つARFであることが示された(Biochim.Biophys.Acta1309:205-210、1996)。 2、プラナリア新生細胞におけるセロトニン受容体PLAR4の発現:(1)プラナリアの膜画分のセロトニン受容体活性を特異的に阻害するアンタゴニストが、プラナリア頭部の再生を著しく抑制し、特に中枢神経系の頭部神経節の再構築を阻害することが、組織学的解析から明らかになった(Neuroreport8:173-178,1996)。(2)当初計画したサイズごとに分別したプラナリアの各細胞におけるセロトニン受容体ファミリーPLAR4の発現の解析は、解離細胞の維持・分別が非常に難しいため、まず個体レベルでPLAR4発現の詳しい解析を行い、再生との関係を考察した。再生過程を追ったNorthem blot解析により、PLAR4 mRNAの発現は再生開始後増加してゆくこと(6d,約300%)が判明し、再生時にこの受容体を持つ細胞が活性化されていることが示唆された(Gene in press、1997)。また、感度の高いRT-PCR法を用いて再生開始直後から2時間の間にPLAR4 mRNAの一過性の減少が観察された。これは他の多くの受容体で知られているリガンド刺激後の受容体の発現低下に相当すると考えられ、PLAR4のリガンドと想像されるセロトニンを正常なプラナリアの飼育水に添加し、PLAR4の発現を調べた。その結果、発現低下がセロトニン添加のみにより起こったことから、再生過程でPLAR4がセロトニンを伝達物質として受容している可能性が強いと考えられる。以上の解析から、プラナリア再生の初期過程でセロトニン受容体が重要な機能を果しており、PLAR4がその分子に相当する可能性が高いことが示唆された。
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