研究概要 |
14-3-3タンパク質(以下14-3-3)ファミリーは、細胞内シグナル伝達系、とりわけ蛋白質キナーゼを介した情報伝達経路に深く関わった機能を有することが知られている。本研究ではこのタンパク質ファミリーのシグナル伝達系での役割を明らかにすることを目的として、標的タンパク質に対する14-3-3の結合部位を解析するとともに、これまでに報告されていない新規の標的タンパク質を同定することを試みた。 バキュロウイルス/昆虫細胞タンパク質発現系を用いて調製したRaf-1、Bcrキナーゼやラット脳内のさまざまなリン酸化タンパク質と14-3-3部位欠質体との相互作用を解析した結果、14-3-3のアミノ酸番号で171-213の領域が上記したキナーゼやリン酸化タンパク質との結合に本質的であることが分かった。さらに、この領域はトリプトファン水酸化酵素に対する14-3-3の結合領域として以前に同定したもの(box1と命名;Ichimura et al.JBC,1995)と完全に一致しており、box1が標的タンパク質に対する14-3-3に共通の結合領域であることが明らかとなった。 次に、14-3-3eta分子種を不溶化したゲルを調製し、これを用いたアフィニティークロマトグラフィーにより、ラット脳中の14-3-3結合タンパク質を分離した。得られた約30種のスポットを特異抗体等を用いて解析したところ、チューブリン、アクチン、トリプトファン水酸化酵素などが同定された。しかしながら、多くのタンパク質スポットには抗体は反応せず、未発表の標的タンパクである可能性が示唆された。現在各スポットをゲルから抽出して部分アミノ酸配列を決定しているところである。
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