認知行動課題を遂行中のサルの脳活動状態を計測した。脳活動の測定には、時間的解像度と空間的解像度が共に優れているが、全脳を網羅するのが困難な埋込み電極法と、時間的解像度は劣るが、広範囲を高い空間的解像度で計測できるPETを相補的に併用した。その結果は解析中であるが、一部の成果を報告した(Tsujimoto et al.1997)。これは、色弁別性go/no-go運動課題遂行時の脳活動をPET法で計測したものである。2色の光刺激をランダムな順序と時間間隔で0.5秒間呈示し、一方の色なら手運動を行えば報酬が与えられ(go)、もう一方の色なら運動に無関係に報酬は与えられない(no-go)、という課題をサルに行わせる。また、比較のために、go刺激ばかりの運動課題を行わせる。このコントロール実験に比較して、go/no-go運動課題遂行時には前頭前野の主溝部位や後頭葉のV4野、および頭頂連合野の一部で脳血流量が有意に増加することが明らかになった。主溝部の血流増加は、電気生理学的手法で先に報告した、この部位の運動停止判断や運動抑制機能を反映していると考えられる。また、V4野の活動は、電気生理学的研究で既に報告されているこの部位の色弁別機能を反映したものと考えられる。頭頂連合野の活動は従来から報告されているこの部位の機能からだけでは十分に解釈できない。しかし、神経解剖学的研究は、V4野からこの頭頂連合野を経由して前頭前野の主溝部位に到達する皮質皮質間結合の存在を報告しており、本結果との関連が興味深いと考えられる。現在この点の解明をめざして、埋込み電極法と冷却法による脳活動状態の研究を続行中である。
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