雄性ラットの脳内でGABAニューロンやオピオイドニューロンによって抑制されているLHRHニューロンの分布を調べるため、GABA_A受容体の拮抗薬であるビククリン(BIC)やオピオイド受容体の拮抗薬であるナロキソン(NAL)を投与して、FosとLHRHに対する二重免疫組織染色を行った。まず、自由行動下にある雄性ラットに薬物を投与して15分間隔で経時的採血を行った後、過用量のネンブタールを雄性ラットに投与して速やかに4%パラホルムアルデヒド-PBで灌流固定した。生理食塩水を投与したコントロール群では血中LH濃度に変化は見られず、Fos陽性LHRHニューロンはほとんど確認されなかった。一方、BIC(50mg/kg/h)を投与した群では有意に血中LH濃度が上昇し、Fos陽性LHRHニューロンも確認された。Fos陽性LHRHニューロンは主にdiagonal band of Brocaや内側視索前野に集中した。また、NAL(5.0mg/kg/h)を投与した群でも有意に血中LH濃度が上昇し、Fos陽性LHRHニューロンも確認された。しかし、Fos陽性LHRHニューロンは主に内側視索前野の後部から視床下部内側底部に集中し、BIC投与群とは異なったLHRHニューロンの分布が観察された。以上より、雄性ラットの脳内で、GABA_A受容体を介してGABAにより抑制されているLHRHニューロンはdiagonal band of Brocaや内側視索前野に存在し、オピオイドによって抑制されているLHRHニューロンは視索前野の後部から視床下部内側底部に存在していることが示唆された。これは当研究室で舩橋らがすでに報告している発情前期の雌性ラットを用いた実験結果と一致する。しかし、BICによって発現されたFos陽性LHRHニューロンの数は、発情前期の雌性ラットよりもかなり少なかった。
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