本研究は、長時間に渡り生体内のグルコース濃度(血糖値)測定が可能なインビボ型グルコースセンサの開発を目指し、種々のピロール誘導体の電解重合膜を包括材料に用いたグルコースオキシダーゼ(GOD)固定電極の作製及びそのセンサへの応用について検討した。ピロール誘導体としては、N-置換基末端にプラスチャージを有する3-(1-ピロリル)プロピルトリメチルアンモニウム塩(PPA)と、ホスファチジルコリン極性部を有する3-(1-ピロリル)プロピル-2-(トリメチルアンモニウム)エチルホスフェート(PPP)の2種類を用いた。ホスファチジルコリンは生体膜を構成している重要なリン脂質であり、近年これらの極性部を有するポリマーは生体適合性材料として注目されている。 電極の作製は、白金電極又は白金をナフィオンコートした電極をGODの存在下、ピロール誘導体の電解重合することにより行った。作製した電極のセンサ寿命を調べた結果、PPAを用いた電極は、作製後からナフィオンコートしていない電極では20日間、ナフィオンコートした電極では50日間、安定した応答が得られた。一方、PPPを用いた電極は、作製後約2週間は応答がばらつき安定しなかったが、それ以降ナフィオンコートしていない電極では10日間、ナフィオンコートした電極では20日間、安定した応答が得られた。電解重合により包括的に酵素を固定した電極では、一般に作製後数日間は応答の減少等の変化が見られるが、PPAを用い作製した電極でこのような挙動が見られなかった。これはGODが血液のpH付近ではマイナスに帯電していることから、静電気的相互作用により、GODが強固に電極に固定されたためと思われる。PPPを用いた電極では、PPPポリマー膜が親水性が強く、水溶液中で膨潤するため酵素の固定が不安定であったと思われることから疎水部分の導入による改善を今後検討する。
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