本研究では、体内埋込型全人工心臓の制御方法開発のために、長期間留置可能、かつ本位により計測値変動の無い低圧系体内留置型血圧センサーならび、体内埋込型全人工心臓の制御のために骨格筋組織内や血液中の酸素飽和度を計測するための体内埋込型赤外線センサーの開発を行った。[低圧系体内留置型血圧センサー]抗血栓材料(セグメンテッドポリウレタン:東洋紡製TM-5)を用いて直径1.3mm、薄さ0.15mmのサック状の袋を作成し、カミノ社製のレーザー計測式カテ先圧センサーの先端に生理食塩水を封入して装着し、長期間抗血栓性を有し、体内変化等に影響を受ずに圧力計測可能なセンサーを開発した。本センサーのIN VITRO試験による圧力測定能は0〜30mmHgの範囲にて他圧センサーと同等の性能を有していることを確認した。[体内埋込型赤外線センサー]赤外線レーザーダイオードおよび光電子増倍管を用い、成山羊下肢の皮膚を切開し筋組織に直接、770〜900nmの赤外光を照射、反射光を計測しオクル-ダを用いて大腿動脈(筋組織)血流量を変化させ、各波長における吸光度の変化を評価した。その結果、吸光度のみからの情報から筋組織における酸素飽和度の算出は困難であることが判明した。そのため、人工心臓に装着し長期間、血中酸素飽和度が計測可能な酸素飽和度センサーを開発した。本センサーは695nmと805nmの波長光を発する赤外線レーザーダイオードおよびフォトトランジスタ、信号処理用電子回路からなり、人工心臓の透明な血液ポンプ外部表面に設置し、血液ポンプ外部から照射した赤外光の反射光の反射強度を計測することにより血中酸素飽和度を計測するものである。牛血を使用したIN VITRO実験により、血液ポンプ外面より血中の酸素飽和度が計測可能であることを確認した。今後は両センサーを生体内に埋め込み、長期間の耐久性試験を行っていきたい。
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