本年度は、Siナノ結晶又はナノ結晶を含む試料に不純物元素をドープし、それに伴う光学スペクトルの変化を検出することを試みた。試料は、Si、SiO_2、さらに不純物元素を含むターゲットを高周波同時スパッタリングし、堆積した薄膜を熱アニールすることにより作製した。高分解電子顕微鏡観察から、ナノメートルサイズのSi結晶がSiO_2マトリックス中に成長していることを確認した。光学測定として、赤外吸収測定、ラマン測定、フォトルミネッセンス測定を温度を変化させて行った。得られた成果は、以下の通りである。 1)B、P元素をドープしたSiナノ結晶:赤外吸収スペクトルには、不純物ドープにより生成された自由キャリアーに伴う吸収が観測された。ラマンスペクトルには、自由キャリアーの存在に起因する非対称なピークが観測された。さらに、フォトルミネッセンススペクトルには、不純物準位に起因する発光成分が観測された。これらの結果はいずれも、Siナノ結晶へのド-ピングが可能で、ドープしたナノ結晶特有の光学スペクトルが観測されることを示している。 2)Er元素をドープしたSi-rich SiO_2膜:フォトルミネッセンススペクトルには、Siナノ結晶による発光ピークとErによるピークが観測された。ド-ピングの濃度を変化させた場合、励起強度を変化させた場合のいずれの場合にも、2つのピーク強度には強い相関関係がみられた。このことから、Erの発光がSiナノ結晶からのエネルギー移動によっていることが判明した。
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