研究概要 |
今年度に得られた成果は以下のとおりである。 1)B,PをドープしたSiナノ結晶のフォトルミネッセンス:昨年度までの研究で、B及びP原子をSiナノ結晶にドープする技術はほぼ確立されたので、今年度はドープされた試料からのフォトルミネッセンススペクトルを詳しくしらべた。不純物ドープされていないSiナノ結晶のフォトルミネッセンススピークは、測定温度を下げていくと、バルク結晶のバンドギャップの温度変化をなぞった形で高エネルギーシフトする。ところが、Bをドープした試料では、これとは逆の低エネルギーシフトが観測された。これは、不純物に束縛されたエキシトンからの発光が現れたものと解釈できる。得られたデータよりエキシトンの束縛エネルギーを見積もると、ほぼ妥当な値が得られた。 2)Siナノ結晶からのエネルギー移動によるErイオンの発光:昨年度までの研究で、Erイオンを含むSiO2膜中にSiナノ結晶を埋め込み、可視光レーザーで励起するとSiナノ結晶からのエネルギー移動によりErが1.5μmの波長で発光することが分かっている。本年度は、この発光の詳しいメカニズムを探るために、発光スペクトルのSiナノ結晶サイズに対する依存性、励起光パワー依存性、Er濃度依存性、温度依存性等を測定した。その結果、発光強度が温度に殆ど依存せず、Thermal Quenchingが殆ど起こらない事などが判明した。これらの結果は、さらに明確にエネルギー移動を裏付けている。 3)Siナノ結晶からのエネルギー移動によるYbイオンの発光:本年度始めて、Ybイオンの発光の測定を試みた。Ybイオンの発光エネルギーは、Erに比較するとSiナノ結晶のバンドギャップ値に近く、発光特性に変化が現れると予想される。測定結果は、予想を裏付けるものであり、特に、YbイオンからSiナノ結晶への逆エネルギー移動が重要であることを示唆している。
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