研究概要 |
本研究の第一の目的は、不純物を半導体ナノ結晶にド-ピングする技術を確立することである。第二の目的は、ド-ピングの成否を判定しド-ピングの状態を評価する手段を開発することである。第三の目的は、ド-ピングによるナノ結晶の物性変化を調べることである。 第一の目的に関しては、同時スパッタリングの手法により、Siナノ結晶中にB,P等の不純物原子、さらにSiナノ結晶を含むSiO_2膜中にEr,Ybイオン等を濃度を変化させてドープすることに成功した。実際のスパッタリングでは、高周波スパッタリング装置内に、ホスト物質(通常はSiO_2),Si及び不純物材料のターゲットを配置し、基板上にターゲット物質の混合膜を堆積させた後、熱アニールによってSiナノ結晶の成長と不純物ド-ピングを達成した。第二の目的に関しては、ラマン散乱測定やフォトルミネッセンス測定がド-ピングの成否を確かめる有効な手段になることを示した。実際に、ラマン散乱ではド-ピングの効果としてFano型のスペクトルを観測でき、フォトルミネッセンスでは、不純物に束縛された励起子の発光を観測することができた。第三の目的は、必ずしも第二の目的と独立したものではないが、光学スペクトルがド-ピングによって大幅に変化することが明らかになった。Siナノ結晶からErやYbイオンへ非常に効率良くエネルギー移動が行われることが判明し、それによって単独では発光しにくいイオンを強く発光させることが可能となった。これは、Siを素材とする発光素子開発の可能性を示唆するものである。
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