研究概要 |
口唇からの入力情報に応じて咀嚼時の下顎運動がどの様に変化するのかといった現象を捉え、さらにそれらの変化がぞの様な反射弓によりどの筋に影響を及ぼした結果、生じるものかといった制御機構を調べることを目的として、成人男子8名を被験者とし、上下口唇赤辰部の表面麻酔前後でガム咀嚼運動に変化が見られるか否かを調べ、以下の結果を得た。 1.咀嚼運動の定量的な解析において重要な計測項目となる最大開口距離,最大側方移動距離,サイクルタイムの3項目の中で一定の変化が認められたものは最大開口距離であった。すなわち全被験者で麻酔前に比べて、麻酔直後、あるいは麻酔10分後において、最大開口距離が減少し、時間の経過とともに増加し麻酔前の値に戻る傾向が認められた。 2.その際の咬筋、顎二腹筋前腹の表面筋電図から各筋の筋放電持続時間、積分値に関して調べた結果、咬筋の筋放電持続時間および積分値については、変化の認めらないものが多く、一方顎二腹筋の筋放電持続時間および積分値については、麻酔により減少するものが多く認められた。また、下顎運動と筋活動との時間様相については、咬筋に関しては閉口相開始から筋活動開始までの時間が減少するものが6名と多く認められ、顎二腹筋に関しては咬合相開始から筋活動開始までの時間が麻酔により延長しているものが7名と多く認められた。 よって、ヒトの咀嚼運動の口唇からの触覚・圧覚といった体性感覚入力が関与し、その関与は、閉口運動により開口運動に対して大きい可能性が示唆された。以上の結果は学術雑誌に報告した。
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