研究概要 |
動的繰返し負荷および静的負荷時における微小部分の挙動を明らかにするため,屠殺直後に抜歯した牛下顎前歯の左右20対のうち,対の一方を疲労試験用,他力を引張試験用として試片を作製した.試片の作製は被験歯となる牛切歯の唇側面において解剖学的歯頚線の最も歯根側よりの一点と切縁を含む平面を,試片作製基準面とし,この面に平行で唇面表層から2.3〜3.5mmまでの深さに位置する厚さ0.9〜1.1mmの歯質の薄片を低速切断機を用いて採取した.この薄片から平行部の幅1.0mm,長さ1.5mmのダンベル上の試片をならい加工機を用いて歯軸と引張方向が一致するように削りだした.疲労強度は油圧サーボ式動的試験機(8501,Instron)を使用し負荷波形は片振りサイン波,周波数5Hz,繰返し回数10^5回,試験環境は37±0.5℃水中で行い,分析方法としてステアケース方を用い時間強度(疲労強度)を求めた.また,引張試験は同試験機を用い,同様な試験環境で負荷荷重スピード3.9N/secで行った.牛歯象牙質の疲労強度の平均値は51.0±3.6MPa,引張強さの平均値は71.2±7.8MPaであった.この疲労強度はガリウムアロイの32.6〜32.8〜MPa,高銅型アマルガムの25.7〜26.5MPa,コンポジットレジンの22.5〜54.7MPaなどの錬成材料と比較するとほぼ等しいか高い価であるに対し,銀合金の105.6MPa,金銀パラジウム合金の288.8〜321.5MPaなど鋳造用金属よりも低い値となった.象牙質の疲労強度を明らかにしたことにより修復材料の必要とされる特性値できるものと思われる.
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