研究概要 |
顎運動に関与する三又神経運動ニューロンを直接支配するpremotor neuronが、主として橋および延髄レベルの脳幹網様体に広く分布していることはよく知られている。三又神経運動ニューロンに投射するこれらpremotor neuronのうちGABAやグリシンなどの抑制性伝達物質を有するものが存在する可能性が生理学的に示唆されており、このようなpremotor neuronによる抑制性調節系の詳細を明らかにすることは咀嚼運動制御のメカニズムを考える上できわめて重要である。しかし、GABAやグリシン作働性の抑制性premotor neuronの下位脳幹での局在分布およびその割合についてはまだ十分な解析がなされていない。本研究では、機能形態学的手法を用いて、この点を明らかにした。 ラットの三又神経運動核に逆行性標識物質であるtetramethylrhodamine dextran amineを限局注入し、標識されたpremotor neuronがGABAやグリシンを有するか否かを、免疫組織化学と組み合わせた蛍光二重標識法により同定した。免疫組織化学のための一次抗体としてGABAの合成酵素であるGAD、あるいはグリシンそのものの抗体を、二次抗体としてFITCで標識したビオチン化抗体を用い、ABC法により可視化した。二重標識されたpremotor neuronの橋および延髄網様体での分布様式を蛍光顕微鏡下で観察した。その結果、GABAないしグリシン作働性premotor neuronは、主として三叉神経上領域や橋および延髄網様体の外側部に分布していることがわかった。また、これら抑制性premotor neuronはGABA、グリシン作働性いづれの場合にも、premotor neuron全体の約10%を占めていた(Li et al.,J.Comp.Neurol.,373:498-510,1996)。
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