本研究は、咀嚼の1ストロークにおける咬筋筋細胞のリン化合物によるエネルギー代謝状態を31P-MRSで解析することによって、咀嚼の1ストロークにおける咬筋の咀嚼サイクルに果たす役割を、エネルギー代謝レベルから明らかにすることを目的として、現有する臨床用1.5Tesla MRI装置に、マルチスライスで咬筋を包含するsagittal方向でMRIを撮像後、31P-MRS測定領域として咬筋筋腹中央部を選択測定し、現在食品を介在させずに開閉口運動させて信号強度を確認するために、モーションアーチファクトの影響を考慮して許容できるS/N比でスペクトルが得られるまで加算回数、下顎運動および咀嚼サイクルを変化させての31P-MRSパラメータの設定を試みたが、モーションアーチファクトによると考えられるS/N比の低さのために測定は困難であった。そこで、これは咀嚼運動をしている間のエネルギー代謝の測定は、やはり信号強度が低いことに問題があると考え、麻酔下のラット咬筋を用いて段階的に開口させ、同じ下顎位における31P-MRS測定用の加算プログラムを開発し、そのプログラムをヒトに応用することにした。そのためにはまず、咬筋形態および咬筋重量を測定を測定し、ラット咬筋にフィットしたプロ-べを作製した。これによってラット咬筋での測定は十分可能になり、段階的にヒト自由咀嚼での同じ下顎位での31P-MRS測定へと研究を進める予定である。
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