研究概要 |
舌は,咀嚼運動や嚥下運動における中心的役割を果たしている。このような舌の動きの経時変化について客観的に評価した報告はほとんど見られない。 そこで,咀嚼時の舌運動の経時的変化を明らかにすることを目的として,超音波診断装置を用いて,1名の乳幼児の5カ月から3歳まで期間に渡って,赤ちゃんせんべい処理時の前額断面での舌の動きを描出し,舌の左右側への移動および舌背面の傾斜の動きの経時変化についての定性解析を行った。また,舌の動きを時系列に再構築できる画像処理システムを利用することによって舌運動を経時的変化をモデル化した。さらに,咀嚼時の口唇や顎の動きをビデオカメラで撮影し,口唇・顎の運動の機能の評価を行った。これと超音波診断装置での咀嚼時の舌運動の経時変化との関係について加えて検討を行ったところ以下のような結果を得た。 1)生後8か月に始めて舌背面が傾斜する動きが始めて超音波画像で観察できてから,月数の増加に伴って,舌が左右の歯槽堤に寄って舌背面が傾斜してゆく様子や舌背面に陥凹を形成する動きなどが観察できた。 2)外部観察の結果から生後10か月には,左右の口角が非対称性に牽引される動きが見られた。これがちょうど顎を側方へ移動させる動きと考えると,これに一致する時期に舌と顎の側方運動の関連が推察できる。 3)生後14か月の外部観察では,口唇をすぼめたりする動きが見られた。超音波画像所見では,舌背面上の食塊を左右へ移送する動きがさかんに見られるようになった。これが,19か月以降には安定して観察できるようになった。このことから口唇・頬・舌と顎のそれぞれの協調運動の関連が推察できた。
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