研究概要 |
目的:歯周組織疾患の治癒課程は、1)細胞遊走、2)細胞接着と伸展、3)細胞増殖と分化、4)細胞外基質の合成、がある。細胞外基質タンパク質の中には、可溶性コラーゲン、フィブロネクチンはRGD配列を持つ細胞接着因子として知られている。我々は、歯根膜の自己再生能を検索するために、ヒト歯根膜線維芽細胞(HPLF)の培養上清中(HPLF-CM)に1)〜4)を調節するタンパク質の分離を試みている。その培養上清中のタンパク質がHPLFの接着を調整している細胞外基質タンパク質であることが考えられた。また、金らは細胞接着伸展因子(CASFs)の一つにオステオネクチン(ON)の可能性を示唆する報告をした。そこで今回の報告は、ONがHPLFに対して直接にCASF活性を示すかどうかを検索したものである。 方法:HPLFを1×10^4cels/cm^2の細胞密度で、播種しconfluentになるまで5%FCSと0.25mM AsA-2Pを含むD-MEM培地で、培養した。その後、PBS(-)で3回細胞層を洗い、FCS-free,0.25mM AsA-2Pを含むMCDB107を添加し、さらに2日間培養し、培養上清を遠心し、その上清をHPLF-CMとした。HPLF-CMを で限外濾過し、PD-10カラムを用いて、溶媒を25mM Tris-HCl pH7.5に置換した。CASF活性は、試料を疎水性の基材(hydrophobic well)に添加し、HPLFの接着と伸展を測定した。活性を持つタンパク質は疎水性官能基からなるOctyl-Sepharoseに結合することから、0,0.2,1%CHAPSを含む25mM Tris-HCl pH7.5で溶出した。各分画をさらにIEC-DEAE HPLCで分離し、CASF活性の測定、SDS-PAGE後のONに対する抗体でWestern blottingを行った。 結果および考察:CASF活性を示すタンパク質は1%CHAPS溶出分画に認められ、素通り分画と0.2%CHAPS溶出分画にはCASF活性がみられなかった。Western blottingの結果、1%CHAPS溶出分画にのみONが検出された。さらに、ONの抗体でCASF活性が阻害されることから、またONのアミノ酸配列からONは非RGD依存の細胞接着因子であることが明らかになった。
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