研究概要 |
ヒト唾液にはproline-rich proteinやhistidine-rich protein由来のペプチドが多数出現する。何故かプロト型のタンパク質が決まっている。しかしながら、これらに関する研究は非常に少ない。また、これらのペプチドが口腔内でどんな働きをしているかに関する研究も、シスタチンやヒスタチン、を除いて非常に少ない。さらに、咀嚼の異常によりどのようなペプチドが口腔内に出現するかに関する研究はほとんど見られない。そこで、我々はラットを用いて咬合異常に伴って唾液中に出現するペプチドを検索することを目的に本実験を企画した。本実験に先だってどのような条件下で異常なペプチドが出現するかを検索した。歯牙の抜歯や高シュークロース食飼育下で検索した。唾液をモルカットしHPLCにかけた。その結果、ラットではglutamine/glutamic acid-rich protein(Glix-rich protein)がプロト型のタンパク質であることを明らかにした。そして、2種類のGlix-rich proteinsのC-末端部分がいろいろな所で切断されることも明らかにした。Peak(p)21、p24、p26、p28およびp34は高シュークロース食飼育下で、p21およびp24は歯牙の抜歯下で有意に変化した。また、上顎側方拡大装置装着後ではp2.4、p21、p26、p27、p29あるいはp33が影響を受けた。そして、p19、p20、p21、p24、p28およびp33のアミノ酸配列を決定した。結果はそれぞれ、SPLGR,KLLAR,KLLARSPLGR,PPSADADAENVQEGESAPPAおよびGRPPKKIFPFFIYRであった。いずれもC-末端部分の断端であった。これらのペプチドがどうして各種の歯科処置術でそれぞれ異なった長さのペプチドとして口腔内に出現するかに関する研究は非常に興味があり、今回は明らかに出来なかったが、一つの推論が出来る。。ラットはヒトと異なり唾液中にslgAが非常に少ない。従って、これらのペプチドは免疫学的にMHCIあるいはMHCIIの抗原提示に関わりT-細胞を活性化すると考えることができた。
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