紫外線損傷修復における(6-4)光産物光回復酵素の光生物学的意義

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08836005
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 藤堂 剛 京都大学, 放射線生物研究センター, 助教授 (90163948)
• キーワード: 紫外線損傷 / DNA修復 / 光回復酵素

研究概要

紫外線による主なDNA損傷としてピリミヂンダイマーと(6-4)光産物が知られている。(6-4)光産物の突然変異誘発能はピリミヂンダイマーに比べ格段に強く、生成量は少ないものの、紫外線の生物影響を考えるうえで重要な損傷であると考えられている。生物が紫外線によるDNA損傷を修復する機構の一つに光回復がある。光回復は、可視光のエネルギーを利用して紫外線損傷を修復するもので、間違いが無いうえに効率が良く優れたDNA修復機構である。バクテリアから有袋類まで幅広くその存在が知られている。光回復により修復されるのはピリミヂンダイマーのみであると信じられてきたが、我々は(6-4)光産物に特異的に働く光回復酵素がショウジョウバエ細胞に存在する事を世界に先駆けて見い出し、その遺伝子を単離した。
本年度は更に脊椎動物であるXenopusからも同様の活性を持つ遺伝子を単離すると同時にヒトからもそっくりのアミノ酸配列を持つ遺伝子を単離し、この酵素遺伝子が現存生物に幅広く分布している事、さらにピリミヂンダイマー光回復酵素、植物のblue light photoreceptor等とともに青色光を利用する蛋白としておおきな蛋白ファミリーを形成していることが解った。

研究成果

• [文献書誌] T.Todo et al.: "Similarity among the Droscphila(6-4)photolyase,a human photolyase homolog,and the DNA photolyase-blue light photorceptor family." Science. 272. 109-112 (1996)
• [文献書誌] S.T.Kim,T.Todo et al.: "Purification and characterization of Drosophila melamogaster photolyase." Mutation Research. 363. 97-104 (1996)
• [文献書誌] D.S.Hsu,T.Todo et al.: "Putative human blue-light photoreceptors hCRY1 and hCRY2 are flavoproteins." Biochemistry. 35. 13871-13877 (1996)
• [文献書誌] K.Shimoi,T.Todo et al.: "3-amino-1,4-dimethyl-5H-pyrido[4,3-β]indole(Trp-P-1)inhibits the binding activity of T4 endonuclease V to UV-damaged DNA." Carcinogenesis. 17. 1279-1283 (1996)
• [文献書誌] T.Todo et al.: "Flavin adenine dinucleatide as a chromophore of the Xenopus(6-4)photolyase." Nucleic Acids Res.25. 764-768 (1997)