ある特定の統語構造を持つ文が談話の中で果たす機能を明らかにすることが本研究の目的である。なかでも特に文の構成要素の配列に焦点を当て、配列の順番(語順)がどのような話し手の動機に基づいて決定されるのかという点を数量的調査、および実験を手掛りとして実証的に記述することを目指している。 昨年は書き言葉を資料として2種のコピュラ文「〜のが〜だ」と「〜のは〜だ」の数量的調査を行い、先行文脈からの引き継ぎと後続談話への持続という点で、両者が異なった特性を見せることを明らかにした。今年度はこの点をさらに厳密に記述するため、大学生285名を対象に文章完成テストを実施した。これは、上記2種のコピュラ文を含む文と含まない文から成る物語の冒頭部4種を提示してその先を書き継がせるテストである。この結果については現在集計中であるが、これまで一部を集計した段階では予想通り特定の登場人物を後続談話に持続させる談話にコピュラ文が使用される割合が高いという結果を得ている。今後はこの集計に基づいてコピュラ文と非コピュラ文の使い分け、および2種のコピュラ文「〜のが〜だ」と「〜のは〜だ」の使い分けを観察し、ある特定の統語構造が特定の語順を選択するために利用されているありさまを明らかにする予定である。
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